沼地に草木は根付かない 沈黙サイレンス 感想
イギリスに半年間住んでいたことがある。2012年の夏から年末にかけてだ。半年とは言えイギリスの家屋に住み、イギリス人と机を並べて仕事をしていた。
イギリスの家屋は日本とはまるで設計思想が違う。気候が違うのだから当然といえば当然だけど、イギリスでは断熱効果を高め、外気を遮断し、セントラルヒーティングと呼ばれる熱した湯を部屋中に送り込んで家全体を温めるシステムによって暖を取るが、日本の伝統的な家屋は風通しを良くして自然の風を取り入れるように設計されている。
欧米の人間は行動に理由を求めるが、日本人は行動に共感を求める。
英語は言葉からしてロジカルだが、日本語は情緒的だ。
英語の一人称単数はIだけだが、日本語は「僕」「私」「俺」「わし」「おら」「おいら」「余」「我」。あとは、『朕は国家なり』の「朕」なんてのもある。
英語で主語が省略されることはほとんどないが、日本語ではしばしば主語は省略される。「私」は消えてなくなるのだ。
電通の新入社員女性の自殺が過労死認定され、大きな話題になっている。そんな日本の社会情勢をアメリカ人のマーティン・スコセッシ監督が見越している、はずはないのだけれど、なんだか関連性を見出さずにはいられない。それはこの作品に永遠不変の真理が含まれているからなのかもしれない。
以下ネタバレを含みます。
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平和の反対は自由 カント 永遠平和のために
永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編 (光文社古典新訳文庫)
- 作者: カント,中山元
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/09/07
- メディア: 文庫
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平和の反対とはなんだろうか?
戦争?紛争?剣呑としたイメージの言葉を思い浮かべがちだけれど、ドイツの哲学者イマニエルカントは「自由」ではないかと説く。
人類の歴史と戦争は切っても切り離せない。日本史でも世界史でも、およそ歴史と名のつくものの実態は戦争の歴史であり、支配者と被支配者の関係こそが歴史を形作っていく。
戦争はいかなる場合においても悪である。では、この悪しき存在である戦争を永遠に起こさないためにはどうしたらよいだろうか?
ドイツの哲学者、イマニエルカントが考え抜いた結果、この草稿が生まれた。100分de名著で取り上げられてて面白そうだったので読んだ。国連憲章を作成する上でお手本になったと言われているらしい。
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視覚表現のその先 読むドラッグ ウルトラヘヴン
時間とは何だろうか?そして、自我とは何なのか?
果たしてそれらは本当に存在するものなのか?
自己同一性の拠り所となるのは、時間の連続性に他ならない。朝トーストを食べ、信号待ちで危険な車と危うく接触しそうになり、朝礼ギリギリでなんとか出社時刻に間に合う。
この連続した時間の中に生きていると認知しているからこそ、時間という概念を理解し、僕達の自我が揺らぐことはない。
でも、それが何らかの理由で揺らいでしまったら、自分が自分であると確証を持てるだろうか?
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