読む瞑想「ねじまき鳥クロニクル」
村上春樹が好きです、と言うとしばしば話題になるのが、あれだけ毎年とるとると言われているにもかかわらず、なぜ村上春樹はノーベル文学賞を取れないのか?ということだ。
その質問に対してのぼくの答えは簡潔で、いつも「政治的イデオロギーがないからでしょう」と答える。
そうやって答えると、いやいや、戦争を話題にした話はあるじゃないか、例えば「ねじまき鳥」となる。
イデオロギーというのは思想のことで、思想とは行動を左右するものだ。
そういう観点で見たとき、ねじまき鳥に政治的イデオロギーがあるか?ともう一度聞かれれば、ぼくはやっぱり「ない」と答える。
では、例えば、昨年(2017年)にノーベル文学賞をとったカズオ・イシグロ。彼の小説には政治的イデオロギーがあるのか?と問われれば、ぼくは「ある」と答える。でも、べつに政治的イデオロギーがないからと言って、この小説が劣っているというわけではないと思う。
春樹とイシグロではアプローチの仕方が違うのだ。
すごく乱暴に言ってしまえば、カズオ・イシグロは「戦争という人類最大の悲劇に見舞われたとき、私はどう行動すればいいのか?あるいは、何を行動すべきでないのか?」という原則で書かれているのに対し、村上春樹は「戦争という人類最大の悲劇に見舞われたとき、私はどう感じるのか?何を思い、どう行動するのか?」という視点でアプローチしている。
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ほんとうの豊かさとはなにか? 東京物語
カズオイシグロが自身の作品を作る上で影響を受けた作家は誰か?とインタビューされたとき、日本人小説家ではなく、ロシア文学、その中でもとりわけアントン・チェーホフと、日本映画の監督、小津安二郎の名前を上げたそうだ。
なるほど、小津安二郎の「東京物語」を観てそれがよく分かった。
特にイシグロの初期の日本を舞台にした2作品「遠い山並みの光」「浮世の画家」に強く影響が出ている。
老いた両親が子供たちを訪ねるという構図にしても、両親と子供たちのどこか他人行儀な会話、街並みの雰囲気や時代設定。共通する部分は多く存在する。さらに現段階(2018年現在)の最新作である「忘れられた巨人」でもこの老いた両親が子供を訪ねる旅に出るという構図が使われていた。相当な入れ込みようである。
東京物語にしても、カズオイシグロ作品にしても、人々は本音と建て前を上手に使い分け、礼儀正しく、体裁を気にするが、そこに中身はなく、彼らのセリフを決して額面通りに受け止めることができない。東京物語では、老いた両親を子供たちは表面上は歓迎しているふりをしているが、その実決して手放しでは訪問を喜んでいない。両親もそのことはわかっているが、子どもたちを前に決して本音を言わない。
カズオイシグロとの共通点はわかったが、では相違点はどこか?
それはこの作品の根幹となるテーマだろう。
「ほんとうの豊かさとは何か?」この映画を通して小津が描きたかったのはこのテーマだろうとぼくは感じた。
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ウォーキング・デッドがつまらなくなったのはなぜか?ドラマの起きない人間ドラマについての考察
シーズン8を観終わって思った。
悲しい。
わくわくして次の話を待ち望み、次の日に仕事があるのに深夜まで貪るように見てたあのウォーキングデッドは死んだ。このシーズンを通して見て感じたのは、ウォーキングデッドが残念な、よくあるゾンビドラマに成り下がってしまったということだ。
ウォーキングデッドが面白くなくなったのはなぜか、いろいろなメディアが取り上げている。
登場人物が多すぎて彼らにキャッチアップ出来ないから、過剰すぎる暴力表現のせいで視聴者がひいてしまったから、超人気キャラクターを死亡させてしまった結果、彼目当てで見ていた視聴者が離れたから。
ナンセンスである。それは問題の本質ではない。
遅々として物語が進まず、どうでもいいキャラのどうでもいいエピソードが挿入されるから、というのはちょっとわかる。
一言で言えば、「劇的な出来事は起こってもドラマが起きていない」からだ。
そして、物語が進んでないと感じるのも、今エピソードが進んでいるキャラクターがどうでもいいと感じるのも(おっと、タラの悪口はそこまでだ!)「ドラマ」が起きてないせいだ。
かつてのウォーキングデッドに戻ってほしい。その一心で筆をとった。
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