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ほんだなぶろぐ

読んだ本、漫画、見た映画などについてのレビューを、備忘録を兼ねて行っております。

シドフィールドの次はコレ!「SAVE THE CAT 本当に売れる脚本術」

シドフィールドの脚本術は映画脚本のバイブル的な本になっています。主に作劇の作法についての内容であるため、効果は脚本だけにとどまらず小説や漫画など、物語を物語る必要のある全てのジャンルに応用可能と思います。

シドの脚本術は、伝統的な三幕構成について説明しており、脚本家はエンディング、オープニング、第一プロットポイント、第二プロットポイントの順に考える必要があると説いています。
 

シドフィールドの脚本術の隙間を埋めます

本書は、シドの脚本術の有用性を認めつつ、それぞれのプロットのターニングポイントとターニングポイントの間が遠すぎると指摘しています。
そのために、初心者は次のターニングポイントまで書き上げることができずに、路頭に迷ってしまうだろうと述べ、本書でさらに細分化したプロットシートを用意しています。
 
本書のプロットシートは確かに細かく、様々な映画で同じような構成になっていることに気がつきます。
 

スパイク式プロットシートとはこんな感じ

オープニングイメージ
映画全体のイメージとなるようなシーンです。ここから映画が始まります。
 
 
テーマの提示
映画全体のメインテーマを誰かが語ります。
 
セットアップ
映画の状況設定が説明されます。
 
きっかけ
話が転がるきっかけとなる出来事が起こります。
 
悩みのとき
きっかけから、すぐに主人公が行動するのではなく、なんらかの理由があり、葛藤します。
 
第一ターニングポイント
シドでいう、プロットポイント1です。このポイントを境に、物語が一つの方向性を持ちます。
 
サブプロット
メインストーリーから、ちょっと外れたサブストーリーが展開されます。
 
お楽しみ
予告編で出てきたような見所満載のシーンがここで展開されます。ログライン※から期待される通りの展開がここで起こります。読者や視聴者との「お約束」がここで果たされるのです。
 
ミッドポイント
お楽しみのフェイズの結果、主人公は偽りの成功を手に入れます。このフェイズで主人公は絶好調になりますが、ここでの主人公の状態は偽りのものです。ちょうど映画の真ん中に当たる部分です。
 
迫り来る悪い奴ら
敵はお楽しみのフェイズでやられたかに見えますが、実はしたたかに反撃の機会を伺っています。そして、パワーアップして主人公の元に立ちふさがるのです。
 
全てを失って
ミッドポイントで得られた偽りの勝利の結果、オープニング以前よりも状況は悪くなってしまいます。
 
心の暗闇
偽りの勝利で有頂天だった主人公の心情に葛藤が生まれます。そしてようやく主人公は偽りの勝利を捨てて、真に仲間を救うための行動に出るのです。
 
第二ターニングポイント
エンディングに向けての方向性が示される出来事が起こります。シドで言うところのプロットポイント2にあたります。
 
フィナーレ
物語の締めです。テーマに対する答えが提示されます。主人公は教訓を学び、古い世界は新しい世界へと変わって、新たな秩序が生まれます。
 
ファイナルイメージ
オープニングイメージと対になるビートです。オープニングから変化が起きたことを示します。
 
※ログライン
例えば、友達に「その映画ってどんな映画?」と聞かれたときに答える短い映画の内容説明のことを本書ではログラインと呼びます。
 

では、「シュガーラッシュ」ではどうか?

 

ざっとみただけではよく分からないと思いますので、これをディズニーピクサーの「シュガーラッシュ」のプロットでやってみるとこんな感じです。

ちなみに、「シュガーラッシュ」ログラインは、「ゲームの悪役が、ヒーローになるために旅をする話」といったところでしょうか。

 

オープニングイメージ

映画は、ラルフの自己紹介から始まります。フィックスイットフェリックスのゲーム画面が表示され、ラルフが悪役であることが説明されます。ゲームの内容は、気が短くて乱暴者のラルフが、ゲーム内のキャラクターが住んでいるホテルを壊し、ゲームの主人公であるフェリックスをプレイヤーが操って壊れたホテルを直すというものです。フェリックスはその度にみんなから感謝され、ご褒美にメダルをもらいます。

 

テーマの提示

ラルフの自己紹介は、悪役の会という、様々なゲームの悪役が集まる会での自己紹介でした。悪役の会は、集まった悪役達が自分たちの不遇を吐露して互いに認め合う、というものです。

そして、不遇な悪役たちは会の最後に全員でこう復唱して会を終わります。

「俺は悪役それでいい。ヒーローになれなかったことは悪いことじゃない」

これこそがシュガーラッシュのテーマです。

 

セットアップ

セットアップでは、ラルフが「フィックスイットフェリックス」というレトロゲームの悪役であり、不遇なことを示します。セントラルステーションというゲームの登場人物たちが集まる駅で、ラルフはみんなから怖がられ、自分のゲームに戻ると、ホテルでフェリックスがみんなと楽しそうに暮らしているのを横眼に、いつもの寝床であるゴミ捨て場で眠るのです。

 

きっかけ

悪役の会が終わって自分の家に戻ると、花火が打ち上がります。フィックスイットフェリックスは、今日で三十周年です。ホテルでは記念パーティーが開かれていたのです。招待されていないラルフはホテルにおしかけ、キャラクター達とトラブルを起こしてしまいます。もしもラルフがヒーローの証であるメダルをもらったら、ホテルに住んでもいい。ラルフはホテルの支配人とそう約束をしました。

 

悩みのとき

とはいうものの、悪役がメダルをもらうことなんてありません。悩んだラルフはセントラルステーションにあるバーのマスターに相談しますが、君には無理だ、とにべもない返事です。落し物置き場にあるかも?と適当なことを言われたラルフはその言葉を信じて探しに行きますが、当然あるはずもない。しかし、そこで酔っ払った兵士と出会います。

 

第一ターニングポイント

兵士の所属するゲーム「ヒーローズデューティ」では兵士は命がけで毎日メダルのために戦うハードな生活を送っていると、ラルフに愚痴ります。メダルに目がくらんだラルフは兵士の装備を引っぺがして、兵士の所属するゲームの世界に入ってしまいます。

 

サブプロット

「ヒーローズデューティ」の世界はファーストパーソンシューティングの、ハードな世界です。そこでラルフはメダルを手に入れますが、ロケットに飛ばされて行ってしまいます。また、いなくなったラルフを探しに来たフェリックスが「ヒーローズデューティ」のキャラクターに恋をします。

 

お楽しみ

「シュガーラッシュ」の世界に迷い込んでしまったラルフは、メダルをヴァネロペという女の子に取られてしまいます。ヴァネロペはレースの出場のためにラルフのメダルを使ってしまいます。消費されたメダルを取り戻す方法は、ずばり、ヴァネロペがレースに勝つこと。しぶしぶラルフはヴァネロペに協力して、一度もまともにカートに乗ったことがないヴァネロペとマンツーマンで特訓をし、徐々に2人に友情が芽生えます。

 

ミッドポイント

「シュガーラッシュ」の王様は、どうしてもヴァネロペにレースに出て欲しくない。そのため、王様はヴァネロペがレースに出て勝つと「シュガーラッシュ」の世界が崩壊してしまう、とラルフに嘘をつき、ヴァネロペがレースに出ないよう説得してくれと頼みます。そして、ラルフにはメダルを返します。

 

迫り来る悪い奴ら

どうしてもレースに出ると言って聞かないヴァネロペを強引に止めるため、ラルフはヴァネロペのカートを破壊してしまいます。ヴァネロペとラルフはこの出来事をきっかけに仲違いしてしまいます。

 

全てを失って

ラルフはヴァネロペとの友情を失いますが、メダルをゲットするという彼の目標は満たされました。そこで、ホテルに戻って見ると、ホテルの支配人以外誰もいません。悪役であるラルフのいない「フィックスイットフェリックス」は、故障と思われ、修理に出されることをなったため、住人はみんな避難していたのです。

 

心の暗闇

1人でここに住め、とホテルの鍵を支配人から渡されるラルフ。ひとりぼっちだったオープニングよりも、さらに悪化した状況に陥ってしまいました。

夕暮れのホテルで1人佇むラルフ。ふと窓から「シュガーラッシュ」のゲームの筐体が見えます。そこにはなんと大きくヴァネロペの姿が写っていました。

 

第二ターニングポイント

ヴァネロペは「シュガーラッシュ」のバグキャラクターだと王様から聞いていたラルフは、不審に思い、再び「シュガーラッシュ」の世界へ。捕らえられていたヴァネロペとフェリックスを救い出し、フェリックスに壊れたヴァネロペのカートを直してもらいます。これでヴァネロペはレースに出場できることになりました。

 

フィナーレ

白熱したレースの結果ヴァネロペはレースに勝ちます。みんながヴァネロペをバグキャラクターだと思っていたのは、王様がゲームのプログラムをいじっていたからでした。ヴァネロペは実はシュガーラッシュの世界の女王であり、王様は外からやってきた「ターボ」とうキャラクターだったのです。

 

ファイナルイメージ

オープニング同様、「フィックスイットフェリックス」の世界でラルフがホテルを壊しています。しかし、みんながラルフに優しくなり、ラルフは自分用の快適な家で暮らしていることがわかります。そして、彼はヴァネロペという大切な友達を得たのです。メダルをもらえるヒーローにはなれなくても、自分の役割はあるのだと気がついたから、彼は満たされた気持ちでいられるのです。