シドフィールドの次はコレ!「SAVE THE CAT 本当に売れる脚本術」
シドフィールドの脚本術は映画脚本のバイブル的な本になっています。主に作劇の作法についての内容であるため、効果は脚本だけにとどまらず小説や漫画など、物語を物語る必要のある全てのジャンルに応用可能と思います。
シドフィールドの脚本術の隙間を埋めます
スパイク式プロットシートとはこんな感じ
では、「シュガーラッシュ」ではどうか?
ざっとみただけではよく分からないと思いますので、これをディズニーピクサーの「シュガーラッシュ」のプロットでやってみるとこんな感じです。
ちなみに、「シュガーラッシュ」ログラインは、「ゲームの悪役が、ヒーローになるために旅をする話」といったところでしょうか。
オープニングイメージ
映画は、ラルフの自己紹介から始まります。フィックスイットフェリックスのゲーム画面が表示され、ラルフが悪役であることが説明されます。ゲームの内容は、気が短くて乱暴者のラルフが、ゲーム内のキャラクターが住んでいるホテルを壊し、ゲームの主人公であるフェリックスをプレイヤーが操って壊れたホテルを直すというものです。フェリックスはその度にみんなから感謝され、ご褒美にメダルをもらいます。
テーマの提示
ラルフの自己紹介は、悪役の会という、様々なゲームの悪役が集まる会での自己紹介でした。悪役の会は、集まった悪役達が自分たちの不遇を吐露して互いに認め合う、というものです。
そして、不遇な悪役たちは会の最後に全員でこう復唱して会を終わります。
「俺は悪役それでいい。ヒーローになれなかったことは悪いことじゃない」
これこそがシュガーラッシュのテーマです。
セットアップ
セットアップでは、ラルフが「フィックスイットフェリックス」というレトロゲームの悪役であり、不遇なことを示します。セントラルステーションというゲームの登場人物たちが集まる駅で、ラルフはみんなから怖がられ、自分のゲームに戻ると、ホテルでフェリックスがみんなと楽しそうに暮らしているのを横眼に、いつもの寝床であるゴミ捨て場で眠るのです。
きっかけ
悪役の会が終わって自分の家に戻ると、花火が打ち上がります。フィックスイットフェリックスは、今日で三十周年です。ホテルでは記念パーティーが開かれていたのです。招待されていないラルフはホテルにおしかけ、キャラクター達とトラブルを起こしてしまいます。もしもラルフがヒーローの証であるメダルをもらったら、ホテルに住んでもいい。ラルフはホテルの支配人とそう約束をしました。
悩みのとき
とはいうものの、悪役がメダルをもらうことなんてありません。悩んだラルフはセントラルステーションにあるバーのマスターに相談しますが、君には無理だ、とにべもない返事です。落し物置き場にあるかも?と適当なことを言われたラルフはその言葉を信じて探しに行きますが、当然あるはずもない。しかし、そこで酔っ払った兵士と出会います。
第一ターニングポイント
兵士の所属するゲーム「ヒーローズデューティ」では兵士は命がけで毎日メダルのために戦うハードな生活を送っていると、ラルフに愚痴ります。メダルに目がくらんだラルフは兵士の装備を引っぺがして、兵士の所属するゲームの世界に入ってしまいます。
サブプロット
「ヒーローズデューティ」の世界はファーストパーソンシューティングの、ハードな世界です。そこでラルフはメダルを手に入れますが、ロケットに飛ばされて行ってしまいます。また、いなくなったラルフを探しに来たフェリックスが「ヒーローズデューティ」のキャラクターに恋をします。
お楽しみ
「シュガーラッシュ」の世界に迷い込んでしまったラルフは、メダルをヴァネロペという女の子に取られてしまいます。ヴァネロペはレースの出場のためにラルフのメダルを使ってしまいます。消費されたメダルを取り戻す方法は、ずばり、ヴァネロペがレースに勝つこと。しぶしぶラルフはヴァネロペに協力して、一度もまともにカートに乗ったことがないヴァネロペとマンツーマンで特訓をし、徐々に2人に友情が芽生えます。
ミッドポイント
「シュガーラッシュ」の王様は、どうしてもヴァネロペにレースに出て欲しくない。そのため、王様はヴァネロペがレースに出て勝つと「シュガーラッシュ」の世界が崩壊してしまう、とラルフに嘘をつき、ヴァネロペがレースに出ないよう説得してくれと頼みます。そして、ラルフにはメダルを返します。
迫り来る悪い奴ら
どうしてもレースに出ると言って聞かないヴァネロペを強引に止めるため、ラルフはヴァネロペのカートを破壊してしまいます。ヴァネロペとラルフはこの出来事をきっかけに仲違いしてしまいます。
全てを失って
ラルフはヴァネロペとの友情を失いますが、メダルをゲットするという彼の目標は満たされました。そこで、ホテルに戻って見ると、ホテルの支配人以外誰もいません。悪役であるラルフのいない「フィックスイットフェリックス」は、故障と思われ、修理に出されることをなったため、住人はみんな避難していたのです。
心の暗闇
1人でここに住め、とホテルの鍵を支配人から渡されるラルフ。ひとりぼっちだったオープニングよりも、さらに悪化した状況に陥ってしまいました。
夕暮れのホテルで1人佇むラルフ。ふと窓から「シュガーラッシュ」のゲームの筐体が見えます。そこにはなんと大きくヴァネロペの姿が写っていました。
第二ターニングポイント
ヴァネロペは「シュガーラッシュ」のバグキャラクターだと王様から聞いていたラルフは、不審に思い、再び「シュガーラッシュ」の世界へ。捕らえられていたヴァネロペとフェリックスを救い出し、フェリックスに壊れたヴァネロペのカートを直してもらいます。これでヴァネロペはレースに出場できることになりました。
フィナーレ
白熱したレースの結果ヴァネロペはレースに勝ちます。みんながヴァネロペをバグキャラクターだと思っていたのは、王様がゲームのプログラムをいじっていたからでした。ヴァネロペは実はシュガーラッシュの世界の女王であり、王様は外からやってきた「ターボ」とうキャラクターだったのです。
ファイナルイメージ
オープニング同様、「フィックスイットフェリックス」の世界でラルフがホテルを壊しています。しかし、みんながラルフに優しくなり、ラルフは自分用の快適な家で暮らしていることがわかります。そして、彼はヴァネロペという大切な友達を得たのです。メダルをもらえるヒーローにはなれなくても、自分の役割はあるのだと気がついたから、彼は満たされた気持ちでいられるのです。