ほんだなぶろぐ

読んだ本、漫画、見た映画などについてのレビューを、備忘録を兼ねて行っております。

男らしさという呪い「男の子を追い詰めるお母さんの口ぐせ」

男の子がいるわけではないのですが、ジェンダー論として興味があって読みました。昔は僕も「男の子」だったわけで。

 
まず題名に惹かれたんですが、お母さんが「子ども」でも「女の子」でもなく、「男の子」を追い詰めるというのは、ジェンダーの違いが問題の根底にあります。
 
毒母という言葉が話題になり、女の子を追い込む「重い」母がクローズアップされたこともありますが、この両者は女同士であるという点で、和解の糸口がありそうです。
 
しかしこの、母親と男の子というのは、ジェンダーが異なるせいで傷付けているという認識も、傷つけられているという認識も薄いのではないかと感じます。つまり、問題にすらあがる可能性が低い。
 
お母さんがついつい言ってしまう、男の子を追い詰める言葉、それは男の子が先天的に持っている性質のせいというよりは、むしろ親の側のジェンダーの感覚が問題になってくるように感じます。
 
本書でも以下のように問題点を指摘しています。
 
男の子は女の子以上に傷つきやすい繊細な心を持っているのです。ところが母親は、自らが女性であるため、「男の子は強く、おおらかなもの」と信じていて、そこにすれ違いと軋轢が生じます。
 
 

性別による意識の違いは後天的に身につく

オイコノミヤで、ある実験が取り上げられました。
 
男女で、以下の選択をさせます。
A「参加者が同じ仕事をして、その後同じ賃金が支払われる」
B「参加者は同じ仕事をするが、その後最も生産性が高かった者にのみ全員分の賃金が支払われる」
イギリスでは、男性はB女性はAを選ぶ傾向がありました。
しかし、女性が家長として決定権を持つ部族では、逆の結果が起こったそうです。ジェンダーとしての特徴の一部は、後天的に身につくものと考えられるということです。
 
番組の中で、又吉さんが、「らしさは呪いだ」と言っていましたが、本当にそう思います。
 

らしさの呪い

 
日本的にも世界的にも、女性は虐げられて来た歴史があり、男女は不平等でした。そして、先人たちが女性の地位向上を訴えたことにより女性に対するセクハラや暴力、不平等などの問題がトピックとして持ち上げられやすい社会になってきていると思います。(もちろん、まだ不十分だ!というご指摘もあるかと思いますが、「社会が問題を認識している」という点では大きな進歩だと思います)
 
強くおおらかであるべきだと周りから強要される男性が本人も気がつかない間に傷つけられており、「原因は分からないけれど生きづらい」
という現状があるように思います。それが社会的な認識に至らないのは、「男として生まれたという優位がありながら、そんなことを言うのは甘えだ!」とみなされる、「呪い」のせいかもしれません。
ただ、だからと言って、女性の地位を落とすべきだ、と思っているわけではありません。
 
問題を解決するために、どちらか片方がどちら片方を追い込むようなジェンダー論はあってはならないのだと思います。
 
男の子を持つ母親、以外の人にもオススメできる良書だと思います。