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ほんだなぶろぐ

読んだ本、漫画、見た映画などについてのレビューを、備忘録を兼ねて行っております。

ファムファタル 運命の女について考える

 

ファムファタルとは、フランス語で運命の女という意味です。文学、漫画、映画、絵画などの分野でよくモチーフにされています。
 
この場合の女とは、結ばれることで末長く幸せになれる女、というよりは、結ばれれば男を破滅に導く女のことです。
 
このモチーフは、たとえ経済的な成功をおさめ、プライベートでも幸せで穏やかな結婚生活を送っていたとしても抗うことが出来ないという側面を持っています。
 
例えば村上春樹で言えば「国境の南、太陽の西」だと思います。幼い日に心を通わせたお互いの孤独を埋める女性島本さんと謎めいた再会を果たしますが、主人公はすでに妻子をもつ身。それでも彼女の引力に惹かれて不倫をしてしまいます。主人公が運転する車で高速道路を走る最中、助手席に座る島本さんのセリフが秀逸です。
あなたが運転しているのをこうして横で見ていると、私ときどき手を伸ばしてそのハンドルを思い切りぐっと回してみたくなるの。そんなことをしたら死んじゃうでしょうね」 
 

 

村上春樹に大きな影響を与えたアメリカの作家スコットフィッツジェラルドの短編小説、「冬の夢」でもジューディというファムファタルが登場します。
幼少期に出会った美しい少女、ジューディが忘れられず、名士の娘との婚約を破棄してまでジューディに尽くしてしまいます。

「あたしどうかしちゃったみたい。ゆうべはべつの男のひとに夢中だったのに、今夜はあなたに夢中みたいなんだもの」

 

 
また、浅野いにおも、 おやすみプンプンの中で愛子というファムファタルを登場させます。友だち以上恋人未満な、さきとの関係に不和が訪れたとき、幼馴染の愛子ちゃんと再会し、はずみとはいえ愛子ちゃんの母親を殺して逃避行します。彼女こそが主人公にとっての「運命の女」だったのです。

 
絵画では、オーストリアの画家、クリムトファムファタルを描いています。クリムトウィーン大学の講堂壁画作成を依頼されたとき、耽美な絵画を書いたことで多くの非難を受けました。「医学」、「法学」「哲学」と題打った作品ですが、描かれていた内容はまさに「理性の敗北」大学側がオーダーしたかった内容とはまったく異なるものだったため、クリムトは非難の的になりました。

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クリムト「医学」
 
形を変えて色々なところに登場するファムファタルですが、多くはあまり知性をもたず、刹那的で、男の欲望を強烈に刺激する魅力的な女として描かれます。
 
これはいくら学問を修め、身体を鍛え、社会的な成功をおさめたとしても、一瞬のうちにそれら全てを無価値なものにしてしまう、男のサガなのかもしれません。