ほんだなぶろぐ

読んだ本、漫画、見た映画などについてのレビューを、備忘録を兼ねて行っております。

人生は選択だらけ。でも、もし選択をやりなおせたら? Life is Strange

 やり直したい過去がある。
 仕事のミス、学生時代にもっと勉強しておけば、若くて時間のあるうちに旅行に行っておけば、小説を書いておけば。日常のちょっとした失言や、判断のミス。
 行こうと思っていたレストランが閉店していたり、休みだったり。
 ふとした一言がきっかけで、永遠にお別れすることになった友だちもいた。
もし、それをやり直せるとしたら?

 

ライフ イズ ストレンジ

ライフ イズ ストレンジ

 

 

 

 

 写真の勉強をするためにアメリカのブラックウェル高校に通う内気な少女、マックス。
 写真のクラスでいつもの授業を受けたあとで、トイレに行った彼女が目撃したのは、拳銃による殺人事件でした。発砲と、意味ありげなバタフライ。そして、気が付くと、彼女はクラスに戻っていました。
 そこから彼女は不思議な能力が自分の中に芽生えたことを知ります。
 時間を巻き戻すことができる。それが彼女に与えられた能力でした。今なら撃たれた女の子を救うことができるかもしれない。
周りに流され、臆病だったマックスは、初めて自分の意思で未来を変えるために動き出します。

 Steamで販売されたこのゲームが、PS4に移植されたのでプレイしました。
 以降、ネタバレをふくみます。

  トイレで言い争い、撃たれたのは主人公マックスのかつての親友、クロエでした。マックスは時間を巻き戻してクロエを救うことに成功します。

 髪を青く染め、パンクっぽいファッションに身を包んだクロエのことを、マックスは初めわかりませんでした。父親の仕事の都合でシアトルに5年ほど住んでいたマックスは、その間クロエとはまったくの音信不通だったからです。

 クロエはマックスと音信不通だった五年の間で、いろいろな経験をしていました。父親を交通事故によって失い、母親は再婚しました。帰還兵の再婚相手とは折り合いが悪く、いつも衝突していました。辛いできごとが重なった彼女の心を埋めたのは、引っ越して音信不通になったマックスではなく、レイチェルという女の子でした。
 マックスがアルカディアベイに帰ってきたとき、レイチェルは行方不明になっており、クロエはレイチェルの行方を探していました。
 マックスとクロエは旧交を温めなおし、彼女の捜索を開始します。
 何故、レイチェルはいなくなってしまったのか。それがこのゲームを牽引する大きな謎です。

 

 英語で能力のことを『ギフト』といいますが、マックスの能力は気まぐれなギフトそのもの。多用すれば体調が悪くなるし、麻薬を投与されたり、能力の使いすぎで一時的に時間を巻き戻せなくなったりします。
 過去に戻ることに成功したマックスは、クロエの父親を交通事故から救います。車の鍵を隠して、バスで目的地に向かうように仕向けるのです。しかし、その結果待っていたのはマックスの思い描いていた未来とは異なるものでした。


 クロエの父親は健在でしたが、当のクロエは車椅子で現れたのです。聞けば、父親から与えられた車を運転中に事故にあったのだという。両親の献身的な介護、かかる莫大な費用に、クロエの一家は疲弊していました。クロエは将来を悲観してマックスに致死量のモルヒネを投薬してくれと頼みます。
 バタフライ・エフェクトのために、彼女の変えた未来は思いもよらぬ形をとるのです。

 マックスが時間を歪めた結果、アルカディアベイの街に様々な異変が起こることになります。クジラが浜辺に打ち上げられ、月が2つ空に上り、そして巨大な竜巻が街を襲います。これもまた、バタフライ・エフェクトだったのでしょう。
 灯台で竜巻を見つめるマックスとクロエ。
 全てを悟ったクロエは言います。
 何度も私が死にかけるなんて、おかしいと思っていた。最初にマックスが救ってくれたあのトイレでの銃弾で、私は死ぬ運命だったのだと。
 そしてマックスは決断を迫られることになります。
 アルカディアベイの街を救うためにクロエを犠牲にするか、それとも、クロエを救うためにアルカディアベイの街を犠牲にするか。

 

 選んだ過去は変えられない。だからこそ、人は誠実に自分の人生を生きるのでしょう。どんな人生を選んだとしても、その選択の責任は常に自分にあるのです。だからこそ人生は自由なのです。
 莫大な予算をかけて製作されたビッグタイトルも悪く無いですが、こういう捻りの効いたゲームもいいものですね。

 

 ちなみに、私は最後で迷わずクロエを助けるためにアルカディアベイを犠牲にしました。クロエは粗野だし、5年の間音信不通だったことをやたらとなじってくるし、初めは嫌な奴だと思っていましたが、行動をともにすることで彼女のためなら街一つ犠牲にするのも悪くないと思えてしまうのだから不思議なものです。