2017-01-01から1年間の記事一覧
誰が撮っても文句を言われるのではないかというくらい、オリジナルのブレードランナーはカルト的な人気を誇っていた。1982年、ぼくはまだ生まれていないのでその時代の空気はわからないけれど、後の多くのフィクションがこの映画の影響を受けていることを考…
今年のノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロの著作として有名なのは、「日の名残り」「忘れられた巨人」「わたしを離さないで」などの長編だ。これらの作品は、作品全体が巨大なメタファー、隠喩によって支配されており、書いてあることよりも書いてい…
今年のノーベル文学賞がカズオ・イシグロに決定した。ファンとしてはとてもうれしく思うし、これから日本でもカズオ・イシグロの小説を読む人が増えたらいいな、と思うので、レビューを書くことにした。なぜ彼がこのタイミングでノーベル文学賞を受賞したの…
1929年。イギリスで初めて出版された「チャタレイ夫人の恋人」は著者ロレンスの判断でオリジナルの内容から性描写が割愛されていた。オリジナルは知人のみに配布されたが、海賊版が横行していたらしい。 1960年、性描写をオリジナルに戻した無修正版チャタレ…
2017年夏。文学誌を開いた僕は、3度目の挑戦が報われなかったことを知って肩を落とした。今年で33歳になる。一次予選すら通過できなかった文学賞を、それでも今年もまた目指すことになるだろう。小説のネタになるような構想はある。10年勤めた会社だ。抜き…
昨日までニューヨークに行っていましたので、旅行記を書きました。 ◆ メモリアル・デイを前日に控えた日曜日。僕はソーホーの安いホステルに泊まっていた。アヴェニューの名を取っただけのいいかげんなネーミングで、かろうじて鍵のかかる一人部屋はスーツケ…
新刊のたびに全国ネットのニュースになり、ノーベル賞のたびに噂され、存命にも関わらず全集が出る。(僕も持ってる) こんな小説家は僕の知る限り日本では村上春樹だけだ。 そんなわけでもちろん騎士団長殺しには発売前から注目していたし、Amazonで予約し…
テセウスの船というパラドックスがある。ギリシャ神話のテセウスという英雄がクレタ島から帰還したときの船には30本の櫂があり、アテネの人々はこれを大昔から保存していた。しかし、当然櫂は使っていれば老朽化する。朽ちて使えなくなった櫂は新たな木材…
話題になったドラマ「タラレバ娘」のように、最近ではこじらせてるものと言えばもっぱら女子のほうが俎上に上がるけれど、もちろん男子のほうだって負けていない。 映画、夜は短し歩けよ乙女は、主人公が成長するわけでもなく、困難に立ち向かうわけでもない…
イギリスに半年間住んでいたことがある。2012年の夏から年末にかけてだ。半年とは言えイギリスの家屋に住み、イギリス人と机を並べて仕事をしていた。 イギリスの家屋は日本とはまるで設計思想が違う。気候が違うのだから当然といえば当然だけど、イギリスで…
永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編 (光文社古典新訳文庫) 作者: カント,中山元 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2006/09/07 メディア: 文庫 購入: 19人 クリック: 104回 この商品を含むブログ (100件) を見る 平和の反対とはなんだろうか? 戦争?紛争?…
時間とは何だろうか?そして、自我とは何なのか? 果たしてそれらは本当に存在するものなのか? 自己同一性の拠り所となるのは、時間の連続性に他ならない。朝トーストを食べ、信号待ちで危険な車と危うく接触しそうになり、朝礼ギリギリでなんとか出社時刻…