ほんだなぶろぐ

読んだ本、漫画、見た映画などについてのレビューを、備忘録を兼ねて行っております。

2022-01-01から1年間の記事一覧

ごはんを作ったのはだれか?「おいしいごはんが食べられますように」から見る若手作家のジェンダー表現について

欧米圏で仕事をしているとけっこう困るのがメールを送る相手が女性なのか男性なのか意識しなければならないことだ。つまり英文ならMrを付けるか、Msを付けるか。ドイツ語ならHerrをつけるかFrauをつけるか。間違ってしまうと失礼だし、かなり面倒くさい。 加…

ごはんと一緒にコンテクストを食べて生きている「おいしいごはんが食べられますように」

芥川賞を受賞した本作、タイトルだけ見ると、登場人物がなにかおいしい食べ物を食べるグルメ小説、という印象を受けるかもしれない。はじめはぼくもそう思った。中身を読んでみると半分正解で、半分不正解だった。 確かにこの小説には登場人物がなにかを食べ…

「ファウスト」の「渇き」はいかにして満たされ、あるいは満たされなかったか

身も蓋もないまとめ方をするなら、「ファウスト」とは、「悪魔と契約してなんでもできるようになった老人が色気づいて美女を落とす」話だった。そうやってまとめてしまうと「結局のところ男は性欲からは逃れられない」みたいな単純な話に矮小化されてしまい…

おじさんは、遠きにありて思ふもの 「現代日本の開化」【日本人について思うこと】

「おじさん」という日本語について最近よく考えているのだけど、「おじさん」というのは不思議な言葉で、存外、定義が難しいように思う。「おじさん」は一般的には血縁関係にない中年男性を指すが、誰かに向かって「おじさん」と呼びかけるのは大変失礼にあ…

あなたのおうちはどこですか?「ことばと文化」 鈴木孝夫

イギリスからドイツに移り住んで、ほとんど知識のないドイツ語を勉強していると、日本語や日本文化の違いについていろいろと思うところがある。 例えば英語やドイツ語で「さようなら」を意味する「Good bye」や「Auf Wiedersehen」(アウフヴィーダーゼン)…