ほんだなぶろぐ

読んだ本、漫画、見た映画などについてのレビューを、備忘録を兼ねて行っております。

2018-01-01から1年間の記事一覧

周回軌道上の衛星たちは気の毒なライカの夢を見るか 「スプートニクの恋人」

なぜ、宇宙飛行士もロケットも人工衛星も出てこないこの小説の題名が、「スプートニクの恋人」なのだろう?この小説を読み解く上でこれ以上の問いはない。そこから始めたいと思う。 世界初の人工衛星が宇宙に向かって打ち上げられたのは、1957年のソ連だ。一…

与えよ、さらば奪われん 「白痴」

ルカの福音書 第6章に、「与えよ、さらば与えられん」という言葉がある。 まず相手に与える。すると、与えたものは自ずと姿を変えてあなたに戻ってくる。ただし、このときあなたは決して見返りを求めて行動してはならない。無償の愛こそがあなた自身の救い…

「世界の敵」と人類の重大な脆弱性について アンダーグラウンド

霊長類の脳の大きさと、群れの数には相関関係があると言われている。オマキザルの一種「タマリン」という小さなサルでは5個体、ニホンザルなどが含まれる体の大きな「マカク属」では40個体。なぜ霊長類が群れを形成するかといえば、単純にそのほうが生存確率…

部屋に象がいる 『細雪』

英語にこんな慣用句がある。 There is an elephant in the room. 直訳すれば、この部屋には象がいる、となるのだが、なんとも奇妙な言い回しだ。部屋に象などいるはずもないし、象のような巨大な生き物が部屋にいれば誰もが気がつくことだろう。この言葉の真…

読む瞑想「ねじまき鳥クロニクル」

村上春樹が好きです、と言うとしばしば話題になるのが、あれだけ毎年とるとると言われているにもかかわらず、なぜ村上春樹はノーベル文学賞を取れないのか?ということだ。その質問に対してのぼくの答えは簡潔で、いつも「政治的イデオロギーがないからでし…

ほんとうの豊かさとはなにか? 東京物語

カズオイシグロが自身の作品を作る上で影響を受けた作家は誰か?とインタビューされたとき、日本人小説家ではなく、ロシア文学、その中でもとりわけアントン・チェーホフと、日本映画の監督、小津安二郎の名前を上げたそうだ。 なるほど、小津安二郎の「東京…

ウォーキング・デッドがつまらなくなったのはなぜか?ドラマの起きない人間ドラマについての考察

シーズン8を観終わって思った。悲しい。わくわくして次の話を待ち望み、次の日に仕事があるのに深夜まで貪るように見てたあのウォーキングデッドは死んだ。このシーズンを通して見て感じたのは、ウォーキングデッドが残念な、よくあるゾンビドラマに成り下が…

Chromebookの調子がおかしい?DEVモードで使っているひとは注意

ここ数日いろいろと試行錯誤していたので、メモも兼ねて書きます。 結論から言うと、チャンネルがDEV(デベロッパーモード)だったのが原因でした。 STABLEモードに戻したら以下の現象が解決しましたので報告します。 【現象】 ・Jotter Pad(アンドロイドア…

世界はぼくたちの行動でできている 若者をやめて大人を始める

大人っていったいどういう存在なんだろう?二十歳を越えたら人は自動的に大人になるんだろうか?選挙権が与えられたとき、お酒が飲めるようになったとき、人は若者から大人になるんだろうか?社会的にはそうかもしれないが、なんだか腑に落ちない。だったら…

翻訳で死なない小説とは? カーヴァー「羽根」(「大聖堂」より)

翻訳本のことを話すときにときおり話題になるのが、「翻訳本は原文から翻訳するときにその文章の本来の魅力は損なわれてしまう。だから、その小説の真髄を味わうには原文のままで読むしかない」というもの。 その主張にも一理はある。英語圏でしか伝わらない…

神のいない世界でどう生きるのか 神の子どもたちはみな踊る

子どものころ、一輪車の練習に父親が付き合ってくれた。早朝、まだ日の登らないうちに一輪車をトランクに詰めて近所の広場まで運転してくれた。とにかく乗れるようになるまで毎朝その特訓は続いた。父は文句を言わなかったし、ぼくも弱音は吐かなかったと思…

その愛は破滅を宿命付けられている「死の棘」

『怒りには 目的がある』そう言ったのはオーストリアの心理学者アルフレッド・アドラーだ。 例えば、「どうしても子供や夫に対する怒りをコントロールできない」という女性がいたとする。さっきまで烈火の如く怒り、子供を叱責していた母親も、電話がかかっ…

統制された狂気を天才と呼ぶ Devilman Crybaby

愛とは何か?ケモノヅメ、カイバ、ピンポン、夜明け告げるルーのうた、夜は短し歩けよ乙女。湯浅政明の監督したアニメ作品には様々な形の愛が現れ、それが試される。友情、家族愛、異性愛、そして人間や人生、世界に対する愛。湯浅作品のうちのいくつかはそ…