ほんだなぶろぐ

読んだ本、漫画、見た映画などについてのレビューを、備忘録を兼ねて行っております。

2019-12-01から1ヶ月間の記事一覧

そこに必然の恋はあるか? 「国境の南、太陽の西」

「僕たちの恋は必然的なものだ。だが、偶然の恋も知る必要がある」哲学者 ジャン=ポール・サルトル フランスの哲学者サルトルが内縁の妻である、同じくフランスの哲学者ボーヴォワールに話したと言われているのがこの台詞だ。これを読んでなんたる浮ついた気…

許されないすべての人間への赦し「失くした体」

はっきり言ってこの映画の後味は悪い。一般受けとは程遠い映画だ。80分間通して、画面はゴミだめ、通気口、地下鉄の線路などを写すために暗く、ラストにも救いがない。見終わったあと、これはいったいなんだったのか、とガッカリする。期待していたようなエ…

文学の時代性、地域性について「うたかたの日々」

昔、優れた文学というものは、時代や地域に関係なくあらゆる時代のあらゆる地域の人間にとって心に響くものだとおもっていたが、最近はその考え方が狭量に過ぎたと思う。ある時代、ある地域に生まれた人間が書いた小説は好むと好まざるとによらずその時代と…

デタッチメントからコミットメントへ「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」

村上春樹は「風の歌を聴け」でデビューし、2作目の「1973年のピンボール」を書いてから3作目の「羊をめぐる冒険」を書く。いわゆる鼠三部作と呼ばれる最初期のころの話だが、村上が二作目と三作目の間、つまり「1973年のピンボール」と「羊をめぐる冒険」の…

「人間失格」あるいは「斜陽」と「ヴィヨンの妻」から見る太宰

太宰治の一番有名な作品といえば「人間失格」ではないかと思う。学生時代、そんな思いからこの本を手に取ったが、あまりにもナルシズムの強い文章に辟易して途中で投げてしまった。それ以来ぼくのなかで太宰治は苦手意識があって、「人間失格」以外の作品を…

NETFLIXオリジナル「不自然淘汰」がエモい

貧乏人の悲惨さが自然の法則ではなく、制度によるなら我々の罪は重いIf the misery of the poor be caused of the laws of nature, but by our institutions , great is our sin.チャールズ・ダーウィン 2003年にヒトゲノムが解析され、当時は大いに話題にな…