人生の勝ち組を目指して ゴリオ爺さん
『クララとお日さま』ネタバレなしレビュー 「愛することの「これまで」と「これから」について 」
「忘れられた巨人」以来、六年ぶりとなるカズオイシグロの新刊「クララとお日さま」。
本作の語り手は人工知能を搭載したロボットの「クララ」。彼女は子どもの情操教育のために創り出された人工知能で、その身体を動かすためのエネルギー源は太陽光、つまり「お日さま」だ。
カズオイシグロは、「わたしを離さないで」以来再びSFというジャンルで本を出したことになる。
本書を読み終えて、SFとは、世界の「これまで」と「これから」について語るジャンルなのかもしれないと感じた。
技術の進歩によって多くの恩恵をこれまでに受けてきた。例えば、近視の人には今現在、メガネとコンタクトという選択肢のほかに、レーシック手術という選択肢がある。会議に関しても、直接会って話すことのほかにzoomなどのサービスを使ってオンラインで会話することができるようになった。それ自体は素晴らしいことだ。メガネやコンタクトなしで遠くのものが見えるようになったり、物理的に離れていて会えない人と対面で会話することができる。
だが、感情面ではどうだろうか?何かの理由でそうしたサービスを受けられない場合、どうなるだろう?もしも技術の進歩によって、我々の「これまで」が通用しなくなり、価値観が揺さぶられることになったら?
以下、一応重要なネタバレには配慮した内容になっているけれど本当にまっさらな状態で読みたいひとは避けたほうがいいかもしれません。
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「椿姫」は女として生きるより人として死ぬことを選んだ?
椿姫を読むのはもう何度目かで、だいたいの筋は知っていたので、今回はマルグリットという女性はいったいどういう人物だったのだろうかという視点で読んでみた。
ものすごくかいつまんでこの小説のあらすじを説明するなら、この小説はパリで高級娼婦として暮らしていたマルグリットに恋をした青年、アルマンの話だ。アルマンは裕福な家の出ではあるが、マルグリットを養うにはいささか不十分なほどの金しかない。マルグリットはアルマンの純愛に心を打たれ、パトロン達と別れて彼に献身的に尽くすようになる。
今の感覚からするとマルグリットが聖母のように描かれていてご都合主義だ、と言われるかもしれないけれど、今回読み直してみて全然違う感想を持った。マルグリットは聖母なんかではなく、人として敬意を払われるために死んだのではないだろうか。
以下、ネタバレを含みます。
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